「英語を話すときは、まず日本語で文章を組み立ててから、それを英単語に置き換える」
もしあなたが、無意識にこのステップを踏んでいるのなら、残念ながらどれだけ単語を覚えても「英語が自由に溢れ出す状態」にはたどり着けません。なぜなら、そのプロセスこそが、英語上達を阻む最大のブレーキだからです。
私がかつて、小学校で英語の非常勤講師として英語を教えていたとき、ある子供の一言にハッとしました。
その一言は、私たち大人が忘れてしまった「言語の本質」と「大人が日本語から英語に翻訳する正体」を見事に言い当てていたのです。
この記事では、本気で英語を話せるようになりたい社会人が、真っ先に壊すべき「翻訳の壁」と、子供たちが自然に実践していた、英語は英語で考える、「イメージ思考とそのメカニズム」について詳しく解説します。
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小学校の英語活動で起きた、忘れられない出来事
それは、ある日の英語活動での出来事でした。私は子供たちに、遊び感覚で英語に触れてもらうため、こんなゲームを行いました。
ルールはシンプルです。私が英語で形や顔・体の部位の名称、数字、カラーを言い、子供たちはそれを聞き取って、A4サイズの紙にそれらを描いていく。
最終的には、それぞれの「オリジナルの奇妙なモンスター」を完成させるといった内容です。子供たちはモンスターになることは、完成するまで知りません。
- 私が「Draw a big circle!」と言えば、子供たちは一斉に「丸」を一つ大きく描く。
- 「Two triangles!」と言えば、迷わず「三角」を二つ描く。
- 「One red mouth」と言えば、赤い口を一つ描く
子供たちが、聞こえてきた英語をそのまま「絵」に変換するレッスンです。彼らの脳内では、【英語の音 → 図形のイメージ → 手の動き】という処理が、瞬時に、そしてダイレクトに行われます。
もちろん、子供が「丸」という日本語を知らないわけではありません。しかし、彼らにとって英語は「日本語の代わり」ではなく、「その形を指す、もう一つの新しい名前」。
だからこそ、翻訳という遠回りをせず、英語と日本語は別々に頭で処理して、最短距離でイメージに結びつけることができるのです。
「先生、それは英語の絵ですか?日本語の絵ですか?」
レッスンの始めに、私が「今日は絵を描きます」と言ったら、一人の男の子が手を挙げて私に質問しました。
「先生、それは『英語の絵』ですか?それとも『日本語の絵』ですか?」
私は一瞬、言葉に詰まって笑みがこぼれました。大人からすれば「絵に英語も日本語もないだろう」と思うかもしれません。しかし、彼の問いは非常に本質的でした。
彼は直感的に理解していたのです。
まず、確かに西洋の絵と日本人の描く絵には違いがあります。例えば、日本のアニメや漫画、浮世絵がいい例です。西洋のアニメや漫画、西洋画とは異なります。
そして、「英語を聞いて描く世界」と「日本語を聞いて描く世界」は、脳の中では別の処理として存在しているということを、彼は直感的に認識していたのです。
英語は英語の世界観で、見たものや感じたものをそのまま言葉にする。日本語は日本語の世界観で処理する。子供たちは、言語を「翻訳の対象」としてではなく、独立した「イメージの出力ツール」として自然に使い分けているのです。
大人と子供の言語における脳のプロセスの違い
大人は「丸」という日本語に対して、算数的な定義や、日常会話での使われ方など、強いネットワークを持っています。
一方で子供にとっての「Circle」は、先生が描いた「あの形(視覚情報)」そのものの名前としてインプットされます。
- 大人: 音 → 意味(日本語) → 概念(形)
- 子供: 音 → 概念(形)
つまり、日本語の「丸」という言葉を介さなくても、「形そのものを指すラベル」として英語がダイレクトに貼り付くため、翻訳するプロセスが発生しないのです。
英語は英語で考えるコツ|言語は「単語」ではなく「イメージ」で理解する
本来、人間の言語処理は、以下のような順序で行われるのが自然です。
- 視覚イメージ・五感:(目の前に赤い果物がある、甘い香りがする)
- 概念:(これは「リンゴ」という存在だ、という認識)
- 言語:(「Apple」という音を出す)
しかし、日本の英語教育を真面目に受けてきた大人の脳内は、この順序が逆転してしまっています。
【英単語 → 日本語訳 → 意味の理解】
この「日本語というフィルター」を通す癖がついてしまうと、会話のスピードには絶対に追いつけません。なぜなら、脳内での処理ステップが倍以上に増えてしまうからです。あなたが話せないのは知識が足りないからではなく、この「逆流した処理回路」が固定化されているからなのです。
大人が日本語を英語に翻訳する本当の理由とは?後天的な「翻訳癖」
「子供は耳がいいから」「若いうちなら覚えられる」といった言葉で片付けられがちですが、大人が英語に苦戦する真の理由は、能力の差ではなく教育によって作られた「後天的な回路」にあります。
① 和訳中心の学習が生んだ「変換作業」の問題
学校の試験では、常に「英文を和訳しなさい」と求められてきました。これにより、脳には「英語を見たら日本語に直すのが正解」という強力な回路がプログラミングされます。英語を言語としてではなく、パズルのような「変換作業」として捉える癖がついてしまったのです。
② 完璧主義と正解主義
「正しい日本語訳」を求められる教育の中で、私たちは「一言一句間違えずに訳す」ことに執着するようになりました。その結果、会話の場でも「この日本語にピッタリ合う英単語は何だろう?」と脳が検索を始めてしまい、沈黙が生まれるのです。
「英語は英語で考える」スキルは特別な能力ではない
よく耳にする「英語脳」という言葉。それは決して、帰国子女や一部の天才だけが持つ特殊な能力ではありません。その正体は、単に「日本語を経由せずに、イメージから直接英語を出す回路」が動いている状態を指します。
- 非・英語脳: Apple →「りんご」→(赤い果物のイメージ)
- 英語脳: Apple →(赤い果物のイメージ)
このわずかコンマ数秒の差が、積み重なると「流暢さ」の決定的な違いとなります。英語が話せる人は、脳内で日本語のスイッチをオフにし、子供たちが授業で「英語の絵」を描いていたときと同じモードで世界を捉えているのです。
英語は英語で考える思考(英語脳)を作る3つの方法
大人になってからでも、この回路を再構築することは十分に可能です。そのためには、今までの「勉強」のやり方を180度変える必要があります。
1. 英語の説明を「絵」にするトレーニング
文字ではなく、音を聞いてその場でスケッチをする練習です。小学校の授業と同じように、「Circle」と言われたら丸を描く。徐々に「A cat is sleeping on the table.」といった文章にレベルを上げ、それを絵として脳に浮かべる習慣をつけます。
目に映った全体のイメージの中から、フォーカスしている中心となるものをまず言って、その後にカメラのズームを広げていく感じです。
2.英語を英語で考えるコツは、英和辞書を捨ててイメージで覚えること
単語を覚える際、「Apple = りんご」と文字で覚えるのをやめましょう。Googleの画像検索などでその単語の画像を見ながら、その映像と音をダイレクトに結びつけます。
3. 「瞬間英作文」の先にある実践トレーニング
日本語を英語に直す「瞬間英作文」は初期段階では有効ですが、やりすぎると翻訳癖を強化してしまうリスクがあります。ある程度の基礎ができたら、「目の前で起きていることを、実況中継するように英語にする」という、日本語を介さないアウトプットへ移行することが不可欠です。
▼ あなたの脳は「翻訳タイプ」になっていませんか?
英語が口から出ない原因が「単語不足」なのか、それとも「脳の回路(翻訳癖)」にあるのか、自分一人で判断するのは難しいものです。
まずは以下の診断で、あなたの現在の言語処理タイプを特定してみましょう。自分の弱点を知ることが、英語脳への最短ルートです。
英語は英語で考えるコツは「子供の感覚」を呼び起こすこと
小学校の授業で「これは英語の絵ですか?」と聞いたあの男の子は、言語というものが持つ「世界を切り取る力」を本能的に知っていました。
英語は、日本語を別の文字に置き換えるための道具ではありません。英語という眼鏡をかけて、世界をそのまま認識するためのツールです。
もしあなたが今、独学の限界を感じているのなら、単語帳を閉じてみてください。そして、聞こえてくる英語をそのままイメージ(絵)に変換する練習から始めてみましょう。子供たちが自然にやっていたあの感覚を取り戻したとき、あなたの英語は驚くほどスムーズに、そして自由に溢れ出し始めるはずです。
※この記事は「英語学習メカニズム」シリーズの一部です。英語脳を作るための具体的な学習ステップについては、以下のピラー記事もあわせて参考にしてください。






